Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その12 - オーストラリアの特派員コラム

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Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その12



さらに初日から数えて一週間。あっという間に過ぎた。
初めて見知ることや覚えることなどが多く、余裕のつけ入る隙がない状態だった。のんべんたらりとは無理だけど、濃密度の高いウィークディだったことは確かだ。





まず2月4日の火曜日。

2時間ぶっ続けの8年生の授業が2コマあるので、ユミさんにお願いして、それぞれ最後の10分ぐらい時間を頂戴した。
日本の文化である”相撲”を子供たちに紹介することにしたのだ。
特に相撲がそれほど好きでもなく、興味もあまりないのだが、日本文化の急先鋒とも云うべき”相撲”を紹介しない手はない。
外国からステレオタイプで見られがちの国技を、どこまで説明できるかわからないがやってみる価値はある。まあ、派遣元の推薦図書『イラスト日本まるごと事典』に書いてあることの受け売りだが...。
教材は日本から持ってきた大相撲のカレンダーを使った。
しゃべられない分は身振り手振り足振りでカバーしたのだが、滑稽な動きが案外受けた。恥ずかしさを忍んでオーバー気味にやった、塩を撒く所作や四股を踏む場面などの相撲儀礼には興味深々だったようだ。 結果的に功を奏し た。子供たちとの距離も少し縮まった気もした。
しかしながら文法など考えずに話せばいいといわれるが、単語すら出てこず文章として形成することもままならず。願わくばボキャブラリーを増やしたいところだ...。




8年生たちは1月にダーウィンハイに入学してほとんどの子たちが日本語を勉強するのは初めてだ。だから日本語教育の初めの一歩は日本の小学一年生のようにひらがな・カタカナの修得だ。
英語圏の子供が奇妙奇天烈な(多分、象形文字のように思っているに違いない...)「ひらがな」・「カタカナ」の文字に慣れ親しんでいる訳ではないので、一言語として覚えるのには難儀な作業であることは察しがつく。
しかし、ここが大事なのだ。最初はローマ字と「かな」の結びづけから始まるが、日本語の50音を「ひらがな」・「カタカナ」として把握認識して勉強していくか、アルファベットのローマー字という形で勉強していくかで、日本語上達の上達度に差が出てくるようだ。
日本語教育の事始で登場するのが、「ひらがな」・「カタカナ」が大きく書かれたフラッシュ・カードだ。表面はそのものズバリの「日本語かな」、裏面は「かな」を連想させる絵が描かれている。云わば文字と絵との関連付だ。これはかな文字と絵をうまくリンクさせて、イメージを抱かせて「かな文字」として認識させるのに効果的だ。
A4ぐらいの大きさのフラッシュカードで3分ほど必ず8年生の授業の始めや終わりにアトランダムにめくりながら、彼らの心に深く刷り込ませる。
子供たちはフラッシュカードを見て、耳をつんざくような甲高い声で「かな」を発声していく。気持ちよいくらいの声が教室に響き渡る。

この絵。なるほど!というものが非常に多い。


例えば、
【ひらがな】
「あ」--- 「A」 for Antenna.
(ごにょごにょしたところが屋根に付いているアンテナに似てない?)
「お」--- 「O」 for On the Green.
(グリーンに載ったゴルフボール)
「く」--- 「Ku」 for Kookaburra.
(クックバラ:オーストラリアに棲息するワライカワセミという鳥のクチバシの形)
「さ」--- 「Sa」 for Samurai Sword.
(侍の持っている刀。かっこいー)
「た」--- 「Ta」for Ta...
(ローマ字の「Ta」が「た」に見えない?!)
「て」--- 「Te」 for Tennis Racket.
(強引な気もするが丸みのある部分がテニスラケットのネットぽくない?!)
「ぬ」--- 「Nu」 for Noodles.
(ラーメンヌードルを食べているところ)
「ね」--- 「Ne」 for Netball.
(ネットボール:オーストラリアの女の子に人気の球技)
「ふ」--- 「Fu」 for Fujiyama.
(日本の象徴・富士山!)
「み」--- 「Mi」 for 21.
(「み」を分解すると数字の「21」に形が似てないかなあ)
「よ」--- 「Yo」 for YoYo.
(子供がヨーヨーをぶら下げている感じ)
「を」--- 「wo」for Olympic.
(オリンピックの五輪マーク)

【カタカナ】
「イ」--- 「I」 for An Eagle.
(鳥の鷲)
「コ」--- 「Ko」 for Half a Tennis Court.
(形がテニスコートの半分)
「セ」--- 「Se」 for Someone Setting the Table.
(テーブルに腰掛けている人間)
「タ」--- 「Ta」for Tadpole.
(カエルの子供のおたまじゃくし)
「テ」--- 「Te」for TV Antenna.
(TVアンテナ)
「ト」--- 「To」 for A Totem Pole.
(トーテムポール)
「ヌ」--- 「Nu」 for A Noodle Stuck Between Your Teeth.
(カタカナでは歯に挟まったヌードル)
「マ」--- 「Ma」 for Rough Mustache.
(口ひげ)
「ミ」--- 「Mi」 for Me Scratch.
(引っかかれた傷っぽくない?!)
「レ」--- 「Re」 for Broken Recod.
(割れたレコードの欠けたところ...)
「ヲ」--- 「Wo」 for Ostrich.
(ダチョウ)

などなど...。



強引な気もしないでもない...。


それぞれ、誰が考案したのか不明だが(日本政府の出先機関の日本交流協会か?!)、絵を見ているだけで面白い。
特に目からウロコで感心したのが、「ひらがな」の「み」と「た」だ。なんで「み」が「21」になって、「た」が「Ta」になるのだろうか、しばらくわからなかった。
こうして楽しんで覚えないと厳しいんだよなあ。

定例のフラッシュ・カードと同じくらい「ひらがな」「カタカナ」の書き取りテストなども頻繁に実施する。これは授業の終わりにフラッシュ・カードめくりをやった後、決まってテストを執り行なう。

このときばかりは静かに子供たちはテストを受けているのだが、
「マサ(先生とはもう云われない...)、『て』ってなんだっけ?」
とテスト中に生徒からこんな質問をよくされる。
「て for テニスラケット」
と僕はヒントをぼそっと云ってあげる。これはチート(ずる)ではない。あくまでもヒントだ!

そうすると、生徒は少し考えると思い出して「て」を答案用紙にすらすらと書くのである。頭の中でイメージから日本語に変換しているのだ。すごい。
テストの採点は自分の仕事となるのだが、この作業はとてもしんどい...(というより正直面倒だ)。だけど、珍解答続出になるのでこれも見ていて面白い。
ミミズのはったような字があるかと思えば、わからないからとりあえず答案用紙を埋めとけとばかりに知っている「い」だけを全部書き込んでいるのやら、気持ちがいいくらい何も書いていない白紙のもある。明らかに隣の友達の答案をカンニングして、ふたりの答案が同じ間違えをしているのもある。


授業風景も少しずつ見えてきた...。
総じて8年生から11年生まで賑やかというより騒々しい。
しかも教室の中を平気で出歩いたりしてしまっているから驚きだ。9年生以上の色気づいた女の子なんかは化粧直しに勤しんでいたりする。動物園の檻から放たれた動物状態なのだからタチが悪い。
そんなときは、こっちが縮み上がるほどの真顔になったユミさんの怒号が炸裂することがしばしば。締めるべきところは締めないと、示しがつかないし、つけ上がるのだろう。そんなユミさんも「こんなものよ」とあきらめ気味なところもある。いちいち気にしていてはやっていけないのかもしれない。



この写真はあくまでも自由時間だけど...

日本でも騒がしくなることもあるけれど、一応きちんと(黙って)席に座って授業を訊くのが普通の光景だ(だよね?!)。
その反面、積極的なところがオーストラリアの彼らにはある。先生の問題や質問に対して「ハイ、ハイ」とすっと右手を挙げる(答えが合っていようが、合っていまいが...)。
それが一人や二人でなくほぼ全員がだ。なぜだかオージーキッズの挙手の形は右手の拳を作り人差し指を天に伸ばすスタイル。
一概には云えないが、比較的消極的な日本の子供たち(自分もそうだった...)とオージーの子供たちとの違いをまざまざと見せつけられた。
日本では中学生以上になると、手を上げての発言することや発表することに消極的になる傾向がある。手を上げるのは恥ずかしい、恰好が悪いということなのだろう。その点、オーストラリアの生徒は積極的だ。前に出て目立ちたいだけかもしれないが、物怖じせずに間違ってもいいからとりあえず発言しようという生徒が多い。最初の頃はうるさい授業風景はあまり好きではなかったが、生徒の積極的な行動を見てからは、次第に賑やかで活発な授業が好きになっていった...。



「Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その13」に続く。。。
(文・菅 雅壱)
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