Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その11 - オーストラリアの特派員コラム - コラム一覧

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Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その11

オーストラリアコラム
ボクはダーウィンハイスクールから伸びる緩やかな坂道を歩いている。
午後の陽射しは容赦ない。半袖シャツから伸びる腕に、粘着した紫外線がジリジリと焼き付ける。どこからともなく蝉の鳴き声が聴こえ、暑さは増すばかりだ。
芝生の大地をまたいだ向こうの通りをひっきりなしに車が行き交っている。アイリーンのフラット(マンション)に歩いて帰らなくてはならない。
その長い道のりと毎日の日課にせにゃならんということを考えるとため息をつきたくなる。IBMのノートPCを詰め込んだカバンの重さがズシリと肩に乗っかってくる。
──車がありゃなあ...。
恨めしげに走り去る車を眺めるしかなかった...。


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授業は午後二時半には終了した。
アイリーンは仕事が残っているということなので、歩いてフラットに帰ってくれということだった。
ここは、気持ちを180度変えて景色を楽しみながら歩くしかないと思うことにした。
長い坂道を下り、途中で芝生と車の通る二車線道路を横切ると、広い草原が広がっていた。植物が生い茂っているボタニカル・ガーデンだ。
広い草原の向こうには椰子の木がずらっと並んでいる。舗装された道路に立ててある黄色い標識にはポッサムの絵が描かれている。町中でもよくポッサムが出るので注意を促している。ポッサムとは小型有袋類の動物だ。巨大なリスといったところだろう。オーストラリアでは「ワニ注意」の標識すら存在する。
道を挟んでボタニカル・ガーデンの向こうには日本人墓地がある。かつてダーウィンに出稼ぎに来ていた労働者たちのお墓だ。誰も手入れをしておらず、墓石が倒れ、雑草が伸びきっている。労働者たちはどんな思いでこの地で果て、神の御許に帰って行ったのだろう。横の競技場では若者がラグビーの練習をしていて、ひっそりした佇まいが物悲しさをいっそう引き立てている。


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走馬灯のように変化する景色を見ながら歩いて行くと、なんなく家路につくことができた。しかし、毎日はちょとなあ。ハァ~。
荷物を自室に置き、広々としたリビングに移動した。ソファーにゆっくり腰を下ろすと、腰砕けになるくらいぐったり横たわった。
アイリーンがいないリビングで、ほっとしている自分がいた。初っ端からこれではいけないと思うものの、少なくともストレスを感じてしまっている自分を否定することはできない。
これからどうしたものか。外へ行くにも足もないし、どこに行っていいのやら土地勘もない。
ボクはバードゲージだった。かごの中に入れられた鳥ののようなもの。。。
リビングでぼけっとしているしかないのか...。


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流れてくる英語はわからないけれども、何気なしにテレビをつけた。
「おおっ!?」
ボクはうなった。
見覚えのある映像がテレビから映し出されていたのだ。
日本のアニメ「ドラゴン・ボール」だった。もちろん声優の話す言葉は英語だけど。少しだけテンションが上がり心躍った。
学校が終わって家に帰ると、その時間にいいタイミングでアニメが放映されているのだ。少し前に日本で放映された「ドラゴン・ボール」や「セーラー・ムーン」、「ポケット・モンスター」が月曜日から金曜日まで2時半から4時の時間帯に見ることができる。この日本のアニメはオージーキッズたちにも大人気だ。特に「ドラゴン・ボール」の人気はすごく、いい大人たちもよく見ているそうだ。
それから、帰宅後のテレビアニメはボクの日課となった。お供は買いだめしておいた一本のビールだ。アニメを見ながら飲む仕事終わりのビールは本当に最高だ。フラットの目の前にホテルがあって、ドライブスルー方式の酒屋が常設されている。だから手持ちのビールがなくなったとしても酒はいくらでも調達できる。
ボクもいい大人だが少しでも英語の上達になればと食い入るように見ていた。(言い訳か...)


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お気に入りのメルボルン・ビター

それに生徒たちとの会話も「ドラゴン・ボール」をネタにしてけっこう弾んだりする。個人的にはイギリスのクレイアニメの「ボブ・ザ・ビルダー」(邦題:ボブとはたらくブーブース)が好きなんだけどね。帰宅後のアニメ鑑賞は自分の英語レベルにマッチしていて、自分にはおあつらえ向きだ...。
夜の食事時は、アイリーンがいるのでたまに見たい番組があったりしてもやはりチャンネル権は彼女にある。
仕方なしに夜は彼女に譲ることにしている。(オーナーだもんね...)
「ボーリング(退屈だ)、ボーリング(退屈だ)」
と云ってソファーに体を横たえてチャンネルを変えている彼女の姿は非常に印象的だ。目に焼きついて今でも良い思い出だ。


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その日は、すぐ近くに酒屋があるなど知る術もなく、鳥かごに入れられたカナリアのようにひっそりとテレビを見るだけだった...。


「Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その12」に続く。。。
(文・菅 雅壱)
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